第一夜・満月

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広い雪原に小さな足跡をつけて、りすがいっぴき、とことこ走っていました。りすが森へさしかかろうとしたその時、木陰からビー玉のような目が二つ躍り出て、りすを八つ裂きにして食べてしまいました。それはきつねでした。 きつねはりすの足跡をたどって雪原を走り出しました。 雪原の真ん中まできたとき、きつねはふと空を見上げました。 空にはまぁるい銀の月が、どでんと座っていました。 きつねと月の目が合いました。 月はにやりと笑いました。そしてきつねをむしゃむしゃ食べてしまいました。月の口から赤い血が滴り落ちました。 雪の上にぽたぽたと垂れた赤から牡丹の花が咲きました。 そこへ女の子がやってきて、一輪むしって髪へさしました。 女の子は雪原の向こうへ消えてゆきました。 後には月と牡丹が天と地に孤独に座っているだけです。 今夜のおはなしはこれでおしまいです。
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