730人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしと目が合うと彼女は軽く微笑んだ。
栗色のふわふわな髪と、それに負けないくらいふわふわな笑顔に、一瞬見とれる。
─保健委員の子かな。
消毒液の匂いが微かに鼻をかすめ、反射的に拓己の肘に貼られた真新しい絆創膏が頭を過よぎった。
「わたし、クラリネットかフルートがいいなあ。
─あ、サックスも捨てがたい。
亜優は? 希望パートとか、ある?」
廊下を進み、角を曲がるときに振り返ると、昇降口に向かっていく彼女の後ろ姿がちらりと見えた。
最初のコメントを投稿しよう!