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テンポよく言い合う二人の後ろについて歩きながら、わたしはふと、斜め前を歩く拓己の荷物の多さに気付いた。
背中には大きな剣つるぎのようにパラソルを背負い、お弁当の入った小型のクーラーボックスと斜め掛けバッグを両肩に掛け、さらに首からビニールバッグをぶら下げている。
自分の荷物しか持っていないことが何だか申し訳なくて、わたしは足を速めて隣に追いついた。
「拓己」
「ん」
「重いでしょ」
「いや」
「荷物、ひとつ持つよ」
「いい」
「……」
あっさり拒否されてしゅんとしていると、目の前にスッとビニールバッグが差し出された。
「やっぱ、これ持って」
受け取ると、中身はビニールシートのようだった。
「これ、……軽いから、もうひとつ持」
「いい」
「……」
「ちょっとー、二人とも遅いよー」
いつの間にか砂浜に続く階段の降り口に立った日南子は、愚痴に反して早く泳ぎたくてうずうずしているようで、こちらに大きく手招きをした。
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