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 目当ての場所に辿り着くと、俊輔と拓己は二人がかりであっと言う間にパラソルを立て、手分けして浮き輪とゴムボートに空気を注入した。  ここまで時間にして十分足らず。  横須賀生まれ横須賀育ちの二人にとって、小さい頃から数えきれないほど繰り返してきたこの手順は、目をつぶってでもこなせるものなのだ。  パラソルの下で日焼け止めを塗るわたしたちを尻目に次々と服を脱ぎ、ビニールシートの上にぽいぽいっと放り投げる。 「おっし。じゃ、先に行ってるぞっ」 「あ、ちょっと! 少しくらい待ってくれてもいいじゃんかー」  日南子の制止も聞かず、俊輔は焼けた砂の上を「あちあちあちあち」と言いながらもも上げするように波打ち際に向かって走っていく。
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