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 ぼやけた視界が瞬きで晴れると同時に、ポタポタ、と上履きのつま先に涙が落ちた。  ─わたしだって、本当は逃げたい。  このまま投げ出すことができたら、どんなにいいか……。  ハンカチが間に合わず、急いで手の甲で涙を拭ったその時、─パコ、と後頭部を優しく叩かれた。  驚いて顔を上げた時には、拓己の背中が教室の中に入っていくところだった。 「あ。─二ノ宮くん」  教室に、ヤバい聞かれたかな、という緊張が走った。拓己が呼びかけに応えた様子はなく、教室の中を進む足音だけが聞こえる。  立ち止まり、乱暴にロッカーを開ける音と、ごそごそと中を探る音。 「ねえ、二ノ宮くん。今日、サッカー部テスト休みでしょ」  美帆の声には、好意を持つ相手に媚びる、女の子独特のニュアンスが含まれていた。
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