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「一緒に帰らない?  今、カラオケ行きたいねって話してたの。割引券もあるし」 「……」 「……ダメ?」  拓己の返事がないからか、美帆の声が悲しそうに沈む。 「ちょっと悲しいなー。 けっこう勇気出して誘ったんだよ?  二ノ宮くんと仲よくなりたくて。 わたし、こう見えて意外と小心者なんだから」  そう言いながらも自信に満ちた美帆の声の両脇で、残りの二人がわくわくしながら事の成り行きを見守っている気配がする。 「前から思ってたんだけど、……もしかして二ノ宮くんて、わたしのこと苦手?」  少し間があって、バタン、とロッカーの扉を閉める音がした。 「……ごめん」  拓己は、いつもの抑揚のない声で言った。 「苦手、っていうか……。─そもそも、あんた誰だっけ」 「……!」  この時、きっと教室の中の三人とわたしはまったく同じポカン顔をしていたと思う。
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