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「俺もがんばらねーとな。
さっそく置いて行かれてるけど、負けてらんねー。
さっさと追いつかねーと。
手の届かないところに行かれる前に」
「大丈夫だよ、俊輔なら。絶対」
気持ちが高揚し、わたしは思わず大きな声で言った。
「サンキュ。見とけよ、亜優」
「うん。応援してる!」
家の前に着くと、俊輔は小路の入口で足を止めた。
「じゃあね。おやすみ。明日の練習がんばって」
「おう、おやすみ」
笑顔で手を振り合ってから、門の前を通り過ぎ、車庫に向かう。
車にぶつけないよう気を付けながら自転車を止め、鍵を取って再び道路に出たところで、わたしは「あれ」と声を上げた。
「─帰らないの?」
俊輔は自転車のハンドルに手をかけ、まだそこに立っていた。
近づくと、その表情が少し沈んでいる事に気付く。
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