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すっかり陽は落ち、つい先ほどまで夕焼け色だった空は藍色の夜に溶け消えていた。
海からの帰り道は全身が疲れているためか、決まっていつもより自転車のペダルが重い。
暗い小路を縦一列になって進み、緩やかな坂を下って行くと、前方に国道が見えて来た。
速度が上がると潮でごわついた髪が重そうに後ろへなびく。
「ほらなー? 寺田ー」
わたしの前を行く俊輔が、顔を後方に振り向けて叫ぶ。
「チャリで来て良かっただろー?」
見下ろす国道16号線は、ずっと遠くまで連なるテールランプで赤く染まっていた。
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