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「……起伏が……激しい、……ってさあ……」
背後から、日南子の呻うめくような声が聞こえて来る。
「……これ、……起伏、……とかじゃなくて、……階段、……だよね……」
「そ、……そう、……だね……」
応えるわたしも息絶え絶えで、それだけ言うのが精一杯だった。
この階段に辿り着くまでにも相当の坂を上り下りしていて、すでに体力は限界を超えている。
海を出る時には夜風が涼しいほどだったのに、今は体中から滝のように汗が噴き出していた。
「ほれっ、もう少しだからがんばれ。
吹奏楽部がそんなヤワな肺活量でどうすんだよ」
遙か後ろから俊輔の声が飛んで来る。
「ここを登り切ったらあとは下り坂だけだし、さらにご褒ほう美び もあるから。
ファイトッ」
─ファイトって……そんな軽く言われましても……。
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