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「ほら、元気が出たならこっち来てみ。ご褒美やるから」
「ご褒美……?」
わたしは日南子と顔を見合わせてから立ち上がり、足を進めた。
そしてフェンスに近づくにつれ、俊輔の言う〝ご褒美〟が何なのか、ゆっくり理解していく。
「……わ、……めっちゃきれい」
「うん……きれい……」
わたしたちがたった今登って来た、切り立つ白壁。
その下に広がっているのは美しい夜景だった。
ちりばめたビーズのような細かな街の灯りと、その中で緩いカーブを描く16
号線。
そして遠い海上には、横須賀基地に停泊する護衛艦を照らし出すオレンジ色の光が煌々と灯り、それが水面に映り込んで帯を描いている。
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