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「……こういうの見ちゃうとさ。思うわけよ。 俺はやっぱり横須賀が好きなんだなと」  隣に立つ俊輔がぽつりと言う。 「急な坂だの階段だのトンネル多いし、渋滞も多いし、自慢できるのは海くらいしかないし、……たまに横須賀は横浜市の中にあるって勘違いされてたりもするけど」 「……うん」  くすっと笑うと、俊輔もつられて笑った。 「まあ、……だけど、めちゃめちゃいいとこだよな。 やっぱ好きだわ。戻って来てほんと、良かったって思う」 「……」  その呟きは、何となく俊輔が自分自身に向けているような気がして、わたしも拓己も何も応えなかった。  事情を知らないはずの日南子さえ、何かを感じ取ったのか黙っている。  深い紺色の空にはいつの間にか、楕円の形をした月がシールのように貼り付いていた。
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