冷たい隣人

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冷たい隣人

空風が吹きすさみ始めた頃、俺はそろそろかと腰を上げる。少し遅れて帰ってくる俺の姉は、きっと帰ってくるなりこう言うだろうから。 そう思っていると、安普請なドアを開けて件の姉が飛び込んできた。俺より年上とは思えない程小さく、ショートポニーの似合うオレンジ色の髪を垂らしたその少女は、ただいまを言うのももどかしく、開口一番にこう言った。 「外寒いよ陽太!おこた様!おこた様出そ!」 「言うと思った」 毎年恒例の言葉に俺は特に何の感情も抱かず、おこた様おこた様と連呼する姉を置いて押し入れを開ける。 なお、この家ではコタツのことをおこたと呼ばなくてはならないという不文律がある。何故なら。 「俺出しとくから手洗いうがいしなさい、こたっちゃん」 「子供扱いすんな!つーかこたっちゃん言うな!」 この姉の名前こそがコタツ。温森小辰というのがその名前だからである。
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