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なのに、目の前の透の大本命は吹き出した。
「確かに子供の頃はお姉ちゃん子だったけど、いい大人の男が恋人差し置いてお姉ちゃん~じゃ、困るわよ」
「お姉ちゃん!?」
私の素っ頓狂な声はエレベーター内に響いてしまった。
「え?ああ、名乗ってなかったっけ?そう、透の姉で真希よ、こんな時に何だけど、よろしくね、沙那ちゃん」
お姉ちゃん…
ああ、ほんとにこんな時に、だけど、お姉ちゃんだなんて…
ああ、私って馬鹿だ。
「あの、どうして私が私って?」
会った事もないのにどうして?
「ん?言ってもいいのかな?透ね、昔っから好きな子の写真を持ち歩くから。学生の頃は生徒手帳とか、今だと免許証と一緒ね。それで見せてもらってたから、沙那ちゃんの事。って、透の病室、ここね」
たくさん聞きたい事はあったけど、今は透。
透だ。
沢山の検査と処置が終わった透は、痛々しい傷や包帯を除けば、静かに眠っていた。
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