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なんて、馬鹿な事言ってるんだろう…
私、そんな気ないくせに。
透だけしか好きになれないのに。
透が好きで、でも、さよならしようと思って、なのに病院に来るまでに気づいてしまったよ。
私は貴方から離れられないんだって。
だから、透、早く、早く。
「ほんとに起きないと、もう、本当に他の人探しちゃうからね!」
本心じゃない、馬鹿みたい。
でも、そんな馬鹿な言葉を言った途端に。
「…さ…ダメ」
弱々しい声が、した。
それはいつもと違ってとても弱くて、小さくて、聞き逃してしまいそうなほど小さくて、まるで別人のような声だけど。
それでも、その声は。
透、貴方の声。
透はそれだけ言って、また眠ってしまった。
(沙那、ダメ)
そう、言いたかったの?
膝立ちしていた床に力が抜けてへたり込んでしまった。
こんな時なのに…
透の馬鹿、独占欲全開。
何でそれで目覚めるのかなぁ。
馬鹿、透の馬鹿。
でも、好き。
透を待っていたあの部屋で、今日は泣かないって決めてたのに。
涙が止まらなかった。
でも、いいよね?
この涙は、さよならを悲しむ涙ではないから。
良かった。
透が、気がついて、良かった。
誰も好きになんて、ならないよ。
貴方だけ、貴方だけだから。
さよならは言わなくて、いいんだよね?
こうして、静かなまま、私の泣きすする音だけが響く病室で、私と透のクリスマスは過ぎていった。
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