第1話

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なんて、馬鹿な事言ってるんだろう… 私、そんな気ないくせに。 透だけしか好きになれないのに。 透が好きで、でも、さよならしようと思って、なのに病院に来るまでに気づいてしまったよ。 私は貴方から離れられないんだって。 だから、透、早く、早く。 「ほんとに起きないと、もう、本当に他の人探しちゃうからね!」 本心じゃない、馬鹿みたい。 でも、そんな馬鹿な言葉を言った途端に。 「…さ…ダメ」 弱々しい声が、した。 それはいつもと違ってとても弱くて、小さくて、聞き逃してしまいそうなほど小さくて、まるで別人のような声だけど。 それでも、その声は。 透、貴方の声。 透はそれだけ言って、また眠ってしまった。 (沙那、ダメ) そう、言いたかったの? 膝立ちしていた床に力が抜けてへたり込んでしまった。 こんな時なのに… 透の馬鹿、独占欲全開。 何でそれで目覚めるのかなぁ。 馬鹿、透の馬鹿。 でも、好き。 透を待っていたあの部屋で、今日は泣かないって決めてたのに。 涙が止まらなかった。 でも、いいよね? この涙は、さよならを悲しむ涙ではないから。 良かった。 透が、気がついて、良かった。 誰も好きになんて、ならないよ。 貴方だけ、貴方だけだから。 さよならは言わなくて、いいんだよね? こうして、静かなまま、私の泣きすする音だけが響く病室で、私と透のクリスマスは過ぎていった。
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