第1話

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カーテンを開けると、しんしんと降る雪が、私を励ましてくれているように思えた。 反面、この雪は泣かないようにしている私の涙の代わりなのかもと、そんな馬鹿な思いが脳裏を掠める。 私は今、恋人の部屋で、彼の帰りを待っている。 しかも、雪降る12月25日、聖なる夜に… これだけならば、なんて幸せな時間なのだろう。 これだけしかないのなら、どれだけ素敵な待ち時間なのだろう。 それなのに、私の心はこの月のない夜の闇のように暗く、降り続く雪のようにとめどなく悲しみ、静かな音のない世界のように沈み込むのだ。 一年前のこの日は、初めて2人で過ごすクリスマスだった。 仕事を休めない彼を待つ時間、バッグに隠し持ったプレゼントを見ては微笑み、今か今かと心を弾ませ踊らせた。 あれから一年、たったの一年、2度めのクリスマス、なのに。 それとも、だから? たったの一年は365日と言う、気持ちが変化するには充分な月日なんだよね。
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