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透、貴方が私ではない誰かに惹かれるにも、充分な時間だから。
2度めのクリスマス、は最後のクリスマスになる。
1人暮らしの透の部屋、ここしかないの?って思う位、私達の過ごす場所はここだった。
『映画観に行く?』
私の問いには必ずこんな返事が来た。
『レンタルで借りてここで観ればいいじゃん』
『たまには映画館でも観たいよ』
『俺は沙那とこうして観てる方がいい』
そうして透は私の背後からそっと抱きしめて私を離さなかった。
首もとに顔を埋めながら
『いいよな?』
そう言われて、映画館に行く事はなかったね。
『どこか、ご飯食べに行く?』
そんな私の誘いも、透はいつも笑顔でこう言った。
『お腹すいた?何か作るから待ってて』
そう言って華麗なフライパン捌きでご飯を作り始めちゃうから、結局どこにも食べに行かなかった。
『たまにはどこか出かけようよ』
ちょっと拗ねて見せても、透はダメの一点張り。
『なんで?』
少しだけ詰問口調になった私にはすぐに抱きしめて、唇を重ねて…
その温かくて甘やかな時間に誤魔化されて、透と私の時間はいつもここで過ぎていった。
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