第1話

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だから、ここには思い出が余りにも多すぎるんだ。 食器棚にあるお揃いのマグカップ。 これも私が1人で買ってきたんだよね。 どうしたらいいのかな? 自分の分だけ持って帰ればいいのかな? それとも2つとも、持ち帰るものなのかな? わからないね。 洗面所の私の歯ブラシは、捨てていけばいいよね? いつの間にか持ち込んだお泊まりセットは、綺麗に持ち帰ってあげる。 この部屋で撮った2人の写真、貴方は持っているのも嫌かもしれないけど、私が持って帰るのは苦しいよ。 持って帰ってしまったら、見なければいいのに、きっと見てしまう。 そして見てしまったら貴方が恋しくて恋しくて、震える夜を過ごす事になる。 写真は、どうしたらいいんだろうね? そこのカーテンの染みは透が零したコーヒーの染み。 慌てて布巾で叩いたけど、次の日洗って落ちたように思ったけど、いつの間にか滲み出ていた。 キッチンに胃薬があるのは、何気に気の弱い透の常備薬だから。 冷蔵庫には私の好きなアイスティーのペットボトル。 透は切らした事がない。 今日だって、ほら、しっかり冷蔵庫に入ってる。 こんなにもこんなにもここは透と私の場所なのに、もう終わりにしなくちゃいけないなんて。
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