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それは本当に綺麗で、私にはできなくて。
もしかしたら、もしかしたらと、嫌な思いに捕らわれる。
透も同じように笑っていた。
あんなにくだけた透の笑顔を私は見たことがなかった。
あんなに綺麗な女性の前なのに緊張なんて全くなくて、それは私と出逢う前からのお付き合いかもしれない、なんて、振り払いたい考えが浮かんでしまった。
一度こびりついてしまうと消したくても消せない。
私とつきあい出す前の、彼女なんていないよって、透の言葉も嘘なのかもしれないなんて。
地面がグラグラと揺れた気がした。
でも、地震なんてなかった。
ただ、私の視界がぼやけて揺れただけ。
いつの間にか浮かんだ涙は目の前の光景を滲ませて、そしてその曖昧な映像はよりしっかりと私の脳裏に刻まれた。
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