第1話

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透が一番大切なのはあの人で、私、私は… 胸にぽっかり開いてしまった喪失感は、どうにも埋める事ができなくて。 それでも私が想うのは透だけで。 どうしようかと、このまま誤魔化していれば誤魔化し続けられるのかな? 透と過ごす時間を失うよりは、自分の見てしまった物を忘れる努力の方が簡単なんじゃないのかな? 迷いに迷って答えが出せないまま、迎えてしまったクリスマスイブ。 昨日。 本当はイブに約束をしていたんだよね。 だから、頑張れると思った。 クリスマスイブを過ごす相手に、私を選んでくれた事。 もしかしたらあの人が予定があって会えないから、だから私なのかもしれないと、そんな事も考えなくはなかったけど。 それでも嬉しくて。 朝からはしゃいで、早く仕事が終わってほしいと願って過ごした1日の夕方。 それを全部壊した透からのメール。 『ごめん、夜勤に欠員が出て、変わりに入る事になったから。今日じゃなくて、明日にしよう』 信じられなくて、本当はこんな事したくないのに、思わず向かった透の会社。 その駐車場に、透の車はなかった。 ないだろうと思いながら、それでもあってほしいと、願っていた。 悲しくて、寂しくて、辛くて、痛い。 会える事になったのね。 だから私はいらなくなった。 でも、誤魔化すための明日の約束。 透の中で確立されてる優先順位。 変える努力をする? 透が好きなら。 少なくとも透は私をキープしておこうって思う程度には私を必要としてくれる。 その気持ちがあるなら、それはそれでもいいんじゃないだろうか?
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