0人が本棚に入れています
本棚に追加
「これだから、男は嫌なのよ………」
そう嘆いた若菜が行き着いたのは、若菜達三人の昔のたまり場であった空地だ。
小学生の頃まで使用していたのだが、最近は三人揃うことが少なくなったので、立ち寄ることすらなかった。
殺風景な荒れ地の中に、真新しい看板が立ててある。
近付いてみると、『◯×工場建設予定地』と書かれていた。
そうか、この場所はなくなるのか。
若菜はふと、寂しさを感じた。
こんな風にだんだんと、竜貴や清満と離れていくのだろうか。
―辛いの?
若菜は、はっとした。
どこからか、少年の声がしたからだ。
―寂しいのなら、こちらにおいで。
「誰!?」
―おいで。こちらにおいで。そうしたら僕が誰だか教えてあける。
「…………」
若菜は一歩一歩、空地の中央に歩み寄る。
なぜだか、声がそこからした気がするからだ。
少し歩いたところで、若菜の姿が地上から消えた。
―ありがとう。こちらに来てくれてありがとう。
少年の歓喜な声は、誰にも届かない。
最初のコメントを投稿しよう!