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竜貴は、ふと清満を省みた。
彼は珍しく赤面しており、耳まで真っ赤だった。
「おい、清」
「……ふざけんなよ。ちょっと失敗しただけだろ!?」
がつん、と鈍い音が町内に響く。
「ってぇな!!何すんだよ!」
頬を赤く腫れ上がらせた竜貴が、清満に飛び掛かる。
勿論、喧嘩慣れしている清満と文化系男子の竜貴では、その勝敗は明白である。
「やめて、二人とも!!喧嘩なんかしないで!」
若菜が必死に止めるが、二人の取っ組み合いは続く。
「………やめてよ…」
若菜の悲痛な叫びで、彼等は我を取り戻した。
ふと竜貴が若菜を見ると、彼女はうずくまっていた。
「若菜………」
「もう…意味わかんない。そんなことで喧嘩するなんて」
若菜が駆け出した。
「あ、おい……」
「若菜!?」
清満と竜貴は、何故かそれを追いかけることが出来なかった。
男の意地、というものなのだろうか。
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