844人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
私はまたケーキを食べる手を再開させて、テレビに流れるクリスマス特番を見ていると、
「みぃー」
また翔ちゃんが私を呼ぶ。
「もー、なぁに?」
「キスしよ」
うさぎから顔を上げた翔ちゃんが唐突にそんなことを言い出すからケーキを差したフォークを落としそうになる。
「か、風邪うつるから駄目」
「前したのにうつってへんから大丈夫やって」
うっ.......。
確かにそれを踏まえて一緒に過ごしているのだけど、だからってそんなキスなんて......。
恥ずかしがる私を見つめて、翔ちゃんはベッドに横になりながらうさぎのクッションをぎゅうっと抱き締めて
「ちゅう」
と可愛く呟く。
熱で浮かされた甘えた顔で言われると私も鬼になりきれない。
「もう」
ケーキのお皿を置いてベッドのほうに身体を向ける。
期待にキラキラ顔を輝かせる彼。
「目瞑って」
「わかった!」
素直に言うことを聞いて目を閉じる翔ちゃんに顔をよせて
「ぶっ!?」
彼の顔に毛布を被せるとその上から一瞬だけキスをした。
毛布を再び元の位置に戻すと驚いている翔ちゃんの顔が現れる。
「熱が下がったらキスしようね」
照れながら言うと翔ちゃんは目を丸く見張った。
でも、それからいきなりガバッと毛布越しに私を抱きすくめてきて。
「何やねん、お前どこまで可愛いねん!」
ベッドの上に引っ張りあげられてぎゅうっと抱きしめてくるから焦る。
「きゃーっ!ちょっと!」
「大好きやー!」
嬉しそうに言われると抵抗するのも憚られて結局抱きまくらになる私。
結局、マフラーと一緒でクリスマスも好きな人と一緒にいるための口実。
だから、別にロマンチックな場所で過ごさなくてもこうして触れ合えるだけでいいんだ。
私も大好きだよ。
毛布越しだけど、翔ちゃんの腕の感触と匂いに包まれて私は幸せな気持ちで目を閉じた。
だけど二日後、見事に私は熱を出して、翔ちゃんに看病されることになるのだった。
END*
最初のコメントを投稿しよう!