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十二月二十五日。
「みぃー」
ベッドの中から私を呼ぶ声。
ゆっくりと振り返ると翔ちゃんが赤い顔をして見つめてくる。
「みぃー、喉、渇いた」
「はいはい」
翔ちゃんに言われて私はおばさんが買ってきてくれたケーキをローテーブルに置くと、かわりにスポーツドリンクをコップに注いで翔ちゃんに渡す。
あれから、翔ちゃんはまた熱を出して寝込んだ。
病み上がりに冬空の下、私を探して走り回ったせいでぶり返してしまったらしい。
本当は一人で静かに寝ていた方がいいと思ったんだけど、無理に私のところに来て出掛けようとするもんだから、結局、翔ちゃんの部屋でのんびりクリスマスを過ごすことで納得させた。
「みぃー」
「何?」
「テレビばっか見てないで、俺にもかまって」
「だって翔ちゃん病人でしょ。安静に寝とかないと」
「クリスマスやのに」
「仕方ないよ」
クリスマスに寝込んでいるのがよっぽど嫌らしく、翔ちゃんの落ち込み度合いは激しい。
こうなったのも私のせいだから、私は出来る限りクリスマスっぽくなるように小さなクリスマスツリーやらスノードームやらを彼の部屋に飾りつけてみたんだけど、彼はそれでは満足できないようだ。
「本当ならみぃとラブラブイチャイチャする予定だったのに」
すっかり翔ちゃんの私物と化した私のピンクのうさぎのクッションに彼は顔を埋める。
心の声が駄々漏れですよ。
私は呆れながらも、それを言えるくらいまで回復してきたことに安堵した。
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