理想の彼氏

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「美海ー。早くしないと遅刻するわよー」 「はーい」 お母さんの言葉に時計に目を向けると、ジャスト八時。 確かにヤバいと思って水で濡れた手で撫でても未だに不自然な方向に撥ねる前髪を諦めて、鞄を持つ。 「じゃあいってきまーす」 靴を履いて台所にいるであろうお母さんに声を掛けてから玄関を飛び出した。 一歩家を出ると、十二月の寒い空気に肌がピリピリする。 「さっむーい」 私は首に巻いたマフラーを口まで引き上げた。 学校まで徒歩十五分という立地にある我が家。 多少寝過してもダッシュで向かえば大体間に合う。 それが変な余裕を生んでいつもぎりぎりの時間に登校することになる原因なのだ。 うちの学校は進学校で規則など厳しく決められているから、一分の遅刻でも職員室に出向いて遅刻届けなるものを書いて誰かしらの先生のハンコをもらわなければならない。 となると、絶対ハンコとともにお説教を受けることになるのだから、遅刻なんてしたくない。 元来真面目な性格の私は型に嵌ったような模範生だから、先生のお説教には慣れていないのだ。 「みぃ」 寒さに身を縮ませながら早歩きしていると、後ろから声をかけられる。 一瞬、ピクッと肩が跳ねかけるけど、私は振り返らずにずんずんと歩いていく。 だけど、後ろからの足音はどんどん近づいてきて、すぐに私の隣に並んだ。
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