理想の彼氏

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「おはよう。寒いな、今日も」 私の顔を覗きこむようにして挨拶をしてきたのは、隣に住んでいる同級生。 かつ、幼馴染だったりする。 私は一度も視線を向けずに前だけを見てぽつりと答える。 「おはよ」 「なんや、朝からぶうたれた顔して」 「あっ!」 突然、私の首元がひやっとした冷気に曝されて声を上げる。 私の赤いマフラーは私の首から解かれて、かわりに奴の首へと巻きつけられていた。 今日、初めて視界に入れた人物、櫻井翔平こと翔ちゃんは私と目が合うとニッと双眸を細めた。 「いつもいつも私のマフラー取るのやめてよね!」 「ええやん。お前、めちゃ着こんでるねんから」 確かに、私は制服の下に着こめるだけ着こんでいるから白いダッフルコートの下はパンパンだ。 凹凸のないその姿は『雪だるま』と千佳ちゃんに揶揄されるほど。 でも寒さには耐えられないからやめられない。 こういうところが色気がなくて男にモテないところだと思うけど、行き帰りだけだからと自分に言い訳をしてに目を瞑っている。
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