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それなのに、毎朝、毎朝こいつは私のマフラーを取るんだから寒さに弱い私は堪ったもんじゃない。
マフラーを奪った翔ちゃんをキッと睨みつけた。
「自分の買えばいいでしょ!」
「荷物なるやん。マフラーって意外とかさ張るし。寒い時にだけさっと巻きたいと思ったら、都合良くみぃが前を歩いているから助かるわ」
「むぅ」
私はマフラー貸出屋じゃないんだけど!
毎回言っても聞く耳持たないから、私は諦めて今日もダッフルコートの襟を上に引きあげる。
「学校では話しかけてこないでよ」
「なんでやねん。幼馴染やろ」
「七歳までしか一緒に過ごしたことないでしょ」
「そんなこと言うて、俺が大阪行く時、大泣きしてたくせに」
「あっあれは!七歳の時でしょ!第一よ、よく覚えてないもん!」
私たちが幼いころに過ごしたのは七年間だけだ。
といっても赤ん坊の頃なんて覚えてないから、一緒に過ごした思い出があるのは四歳くらいからの三年間。
お隣に住む同い年の子供ということで性別が違っても必然的に仲良くなって、いつも一緒にいた。
それが七歳の頃、翔ちゃんがお父さんの転勤で大阪に行くことになって。
一番の友達がいなくなるなんて事実を幼い私は受け止められなくて、それはそれはピーピー泣き喚いた。
そうして、三カ月前に再びお父さんの転勤でこっちに戻ってきた翔ちゃん。
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