その勇者、被虐趣味

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 勇者、それは伝記に綴られる一人の人物の物語。敵を屠り、味方を鼓舞し、勝利と繁栄を呼び込む者。  敬意を込めて彼らは主人公として描かれる。時には英雄譚、時には恋愛、時には絵本。  代々受け継がれる勇者の物語は時代と共に豊かさを増していく。  そして、ここにも一人。新たな勇者が使命を背負い、戦いに身を投じていくのだ。 「ぶひぃぃぃいいい!! ぶひっぶひぃぃいいい!!」 「ほら! コレがっ良いのかしら!? とんでもない変態ね!」  桜色のロングストレートを靡かせ、柳眉を垂れさせ大きく目を開いた女性。  年齢はまだ若く、二十歳未満だろう。美しく白い肌には荒縄が巻かれ、秀麗な唇からは美少女とは思えない言葉を出している。  赤みが差した頬に全身で呼吸をし、潤んだ瞳で背中越しに別の女性を見上げていた。  臀部には悪い事をした時に親が叱るように叩いた跡がいくつも見られ、彼女の白い肌を紅葉のように染め上げる。  叩かれ、罵られる度に綺麗な曲線を描く臀部が大きく震えて形の良いお尻に手形を残す。 「ごっご主人様ぁあ!」 「誰が、人の、言葉を、喋って、いいって、言ったの、かしら!?」  言葉が途切れると同時に桜色の女性の臀部を叩く真紅の髪を持つ女性。  同じように赤いフレームの眼鏡を掛け、フレームからはチェーンが伸びている。  その色が伝染したように頬にも赤みが差し、ハスキーな声が上擦り恍惚とした表情をしていた。 「ぶひぃ! ぶひっ! ぶひひ!」 「うるっさいわね!」 「あぁぁあああ!」  理不尽極まりない真紅の髪を持つ女性の容赦無い平手が飛ぶ。  これまでより手加減がされていない掌が桜色の女性のお尻に当たり、鋭い音が狭い個室に響く。  それと同時に桜色の女性は背中を弓なりに反り上げ何度も痙攣を繰り返し、床に倒れこむ。 「何、してるのかしら?」  コツコツとブーツを鳴らす赤髪を揺らす女性。それに意識が半分飛んでいながら反応する桜色の髪をした女性。  愛おしい物を扱うようにブーツを両手で掲げるように持ち、舌先を伸ばして汚れを拭き取り忠誠の口付けをした。
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