その勇者、被虐趣味

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「本当に変態ねユース」 「そんなんじゃないもん!!」  下着を付け、いつもの戦闘服を着込む桜色の髪をした女性、ユースティア・ベルベットを見て真紅の髪をした女性は大きく溜息を吐く。  少し舌足らずな声に甘く媚を売るような声色、柳眉を吊り上げ抗議するが威厳が全くない。  艶やかな髪を揺らし、先程まで卑猥な言葉を出していた人物。短い付き合いだが彼女が俗に言う被虐的趣味なのは明らかだ。 「ちょっと人よりアレで、アレがコレなだけだよキャンベルちゃん!」    オマケに頭も悪いのは初日で解った。真紅の髪の女性、キャンベルが思わず平手をかますと嫌がる風も無く一気に頬を赤く染めるのだ。  それをジト目で見つめればユースは頭を横に振り、毅然とした態度を示す。 「流石、被虐勇者様ね」 「うっ! そ、それは……!」  第六十九代目勇者であるユースティアはキャンベルの言葉、勇者に付く二つ名を聞けば嫌そうに顔を顰めようとしながらも嬉しそうに表情を変化させている器用な馬鹿が一人。  頬に手を当て、両腕で大きく膨らんだ胸を挟み、これでもかというほどに強調する馬鹿に対して、栄養は全てそこにいったのだと悟らせるには十分だった。 「こんなのが勇者なんて世も末ね」 「も、もう一回! 見下した感じで、更に言えばゴミを見るような目でお願い!!」  そんなお馬鹿な勇者であるユースを無視し、窓から見える景色に目を奪われるのだ。  空に浮かぶ数々の島の列島。その下にある地面を見下ろせる。    箒で空を飛び、ボードと呼ばれる物で自由自在に空を駆けるのだ。  転移陣はあらゆる場所へと置かれ、ここから見えない別大陸同士を繋ぐゲートが大陸に最低一つは設置されている。    それもこれも技術革新と呼べる物を引き起こした人物による文字通りの生活の革命だ。  自堕落勇者と呼ばれたカオル・シノザキの、目の前で放置プレイだと悶えている被虐勇者の師匠である、たった一人の男による大革命。
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