その勇者、被虐趣味

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「ししょー、マジでししょーって感じでしたよね? 遺言とも言うべき手紙みました? ユースのはもっと乳揉んでおけば良かったって書いてありました」 「私のは、お尻触ったくらいで怒るなって書いてあった」  二人して笑い、勇者カオルを思い出して笑うのだ。最後の最後までブレがない人物だった。  一人一人に残した言葉はずっと心に残るのだから。 「全然アレな勇者ですけど、これからもよろしくお願いしますねキャンベルちゃん」 「仕方ないからよろしくしてあげるわ、ユースティア」  二人は笑いあう。今ではこんな生活も悪く無い、と思っているのだから。  不思議な縁は続いている、勇者の灯火は明るく照らす。 「きっと、ししょーはあの世でも楽しくやってると思うの。閻魔様のお尻でも撫でながら」 「男だったら足蹴にしてそうね」  いつものヘラヘラとした笑顔で、緊張感の無い顔でゆっくりとした時間を楽しんでいるだろう。  勇者のバトンは渡されたのだ。 「ユース、ご飯でも食べに行きましょう。無駄に時間を使ったわ」 「りょーかーい」  キャンベルは朗らかに笑い、眼鏡を押し上げながらユースを率先。  疑問を挟む余地も無く、手を上げながらちょこちょこと堂々と歩くキャンベルの後ろに付いていくユース。  宿の外は空を飛ぶ箒、雲が近く感じられ、独特の造形の家が建ち並び何処までも伸びている。  浮遊石を削りだした浮遊都市は空気が美味しく、竜人の亜人が好んで住んでいる場所、もちろん上を見上げれば龍が観光用の浮遊船を引っ張っていたり、郵便物を届けるワイバーンが人を背に乗せている姿が見えるのだ。 「太りそうね」 「だってそういう食生活だし、仕方ないんじゃないかなー?」  大通りを占めるのは出店、そこには肉料理が様々な料理として並び良い匂いが漂ってくる。  肉食なので野菜の類は少ない、キャンベルは自身の腰辺りを自然と撫で回す。  反対にユースは今にも涎を垂らし、キャンベルが合図したら端から端まで出店を完全制覇するだろう。  だからこそ胸が大きく育つのだと、その反面太る気配が一切しないのは女性として羨ましいばかり。  わざとヒールで足を踏んでやると恍惚とした表情になるユースを見れば、実に不毛だとキャンベルは溜息を吐きながら再び歩く。
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