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「陽太。おい、吉岡陽太!」
「うわっ!」
「さっきから呼んでるのに無視すんなよ」
大声で俺のフルネームを叫び、返事が無いからと俺の額をペチッと叩いたのは、友達の田辺夕哉。
中学が同じだったから、一年の時はクラスが違ったけどずっと仲良くしていた。
「無視したんじゃないって~。気付かなかっただけ」
「同じだろうが。数学の授業もう終わったぞ」
ふと自分の机の上に目をやると、数学の教科書とノートが開きっぱなしだった。
しかも黒板を写していなくて、ノートは真っ白。
「あ~…授業聞いてなかった」
「余所見ばっかしてるからだろ? つか、何見てたんだ?」
俺の机の横に立ったまま、さっきまでの俺の視線を辿るように田辺が教室内をキョロキョロ見回す。
「何かブツブツ独り言言ってたし。可愛い子でも居た?」
「そんなんじゃないって」
カッコイイ人は居ますけどね!
田辺はしばらく教室内をあちこち探していたが、俺の視線の先を見つけられなかったみたいで「ホントに何見てたんだ?」と首を捻っていた。
「あのさ~、田辺ってあの人知ってる?」
「あの人?」
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