第1話

2/18
3479人が本棚に入れています
本棚に追加
/379ページ
初めて見た時から、何故かその人に惹き付けられて目が離せなかった。 俺の通う高校では、学年が上がる毎にクラス替えがあって。 二年生になって同じクラスになったその人は、名簿順でも離れているからまだ一度も話をした事が無い。 目元まで隠れるんじゃないかと思うくらい少し長めの黒髪、知的な黒縁メガネ。 制服のブレザーやシャツも着崩す事なく、キッチリ着込んでいる。 物静かであまり友達とはしゃいだりはしないみたいだ。 廊下側の一番後ろの席に座って本を読んでいる姿は、どこか他人を寄せ付けないような雰囲気がある。 真剣な表情で読んでいるのは小説なのかな? 表紙にアニメみたいなイラストが描いてあるけど。 「何読んでいるんだろ?」 休み時間だけじゃない、授業中もたまにその姿を目で追ってしまう。 「話し掛けたら邪魔だよな~」 自分から『仲良くなりたい』と思った人は初めてかもしれない。 いつもは少し話をして気が合ったら仲良くなる、そんな感じで友達を作ってきたし。 まだ相手がどんな人かも知らないのに仲良くなりたいなんて、俺にしては珍しい事で。 どうやって話し掛けたらいいかすら解らなくて、きっかけというかタイミングを窺ってばかりだった。 .
/379ページ

最初のコメントを投稿しよう!