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そしてある程度の身だしなみを整え、後は寝間着から着替えて出かけるだけである。
彼はしわにならないようにクローゼットに吊るされた服を手に取る。
手に取ったのは今流行りの服だ。人気すぎて、街に行けば同年代の男達の五人に一人は着ているという、人気デザイナーの話題作かつ、問題作だ。
彼はそれの袖に腕を通し、鏡に映った自分に眼をやる。
「かっけえ......」
あまりにもお洒落なデザインに思わずため息と共に言葉が漏れてしまう。実を言うと、彼がこの服を着るのは初めてだったりする。
なぜなら人気があるため、値段の方もそれなりに高い。『ギルド』でいつもより危険な依頼をこなし、なんとか購入することができたのだ。
ハイテンションで鏡に向かってポーズをくりかえしていると、街中に鐘の音が鳴り響く。寝てても起きてしまいそうなくらいの大音量だ。
この鐘がなったということは、九時になったということだろう。約束の時間まであと一時間程あるが、大好きな彼女を待たせたくはない。
それに、彼女を待ってぼんやりとすごす時間も悪くはない。
しばらく悩んだ後、彼は結局早めに家を出ることにした。
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