なんてことはない、いつもの日常

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 ドアを押し開け、家の前の通りに出る。すると風が吹き抜ける。季節のせいか、涼しくて爽やかな風だ。  彼が穏やかな気持ちに浸っていると、地面を軽やかに蹴る音が断続的に聴こえてくる。  その音源の方に眼をやると、一人の女性がこっちに向かって走ってくるのが見えた。 「おぉぉぉい! アルマくぅぅぅぅん!!!」  相手もアルマと呼んだ青年が気付いたことを気取ったのか、手が取れてしまうんじゃないかというぐらい大きく手を振りながら、彼に大声で呼びかける。 「......ミュウ!」  確かミュウとは、この街では待ち合わせの定番となっている大きな広場で待ち合わせだったはずだ。なぜここにいるのかは理解できなかったが、ミュウの顔を見ることができて嬉しかったのだろう。  その証拠にアルマの口許も、知らず知らずの内にほころんでいた。  アルマは身体ごとミュウに向き直すと、両手を浅く広げ、彼女を受け入れる体制をとる。それから柔らかく微笑み、彼女に声をかける。 「ミュウ、早速で悪いんだけど......。君の生脚、 ペロペロさせて!」  そしてミュウが、彼の胸に飛び込ん......―――― 「誰が舐めさせるかぁぁあああぁぁぁ!!!! この、変態がぁぁあああぁぁぁああぁぁぁぁぁ!!!!!!」 「ぷべらッ!?」  ダッシュの速度を乗せたストレートパンチの威力は、女性の持久力に優れる分瞬発力に劣ってしまう筋力を余りあるほどに補い、アルマの頬に突き刺さる。アルマはそのパンチを受け、五メートル程『山なり』に吹っ飛んでいってしまった。
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