なんてことはない、いつもの日常

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 ほとんどの通り名が尊敬と畏怖を込められて呼ばれるのに対し、少々の愛と大半を遊び心で構成された自身を表す通り名を耳に捉えたミュウは、肩まで伸びている艶のある茶髪を振り乱して絶叫する。  そんなミュウに、アルマは半笑いで口を開く。 「ごめんごめん、冗談だよ。ところで何でここにいたの?」 「ぐるるるる......。え? ......あぁ、それはね、アルマ君に早く会いたかったからだよ」  まるで猫のように唸りながら半目でアルマを睨むが、彼の問いには表情を一転させ、うきうきとした笑顔で彼に答えた。  そんな彼女にアルマは優しげに微笑んだ。それから彼女の手を取り、さあ行こうか、と声をかけた。 ◇◆◇◆◇◆◇  多少予定は早まったものの、二人は当初の予定であった買い物をするために商業が盛んな大通りを歩いていた。かなり広い道の両側には多種多様な店が建ち並び、空いたスペースにも何の肉かはわからないが好ましい匂いを漂わせる出店が、客を確保しようと必死に声をあげていた。  まだ朝も早いというのにこの賑やかさだ。これが昼食時や夕飯時になると、今とは比べ物にならないほどの喧騒をかもしだす。  目の届く範囲には、獣人やエルフや人、それから一般人や冒険者然とした者、商人らしき者までもいた。
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