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彼の眼に映った物......。それは高さ四メートルほどはある、巨大な壁だった。
この壁は、王国【ジパング】を魔物の脅威から護るために、【ジパング】を囲うように建てられている。強度を保つため、余計な装飾などはされていない。それがまた見るものに無骨な印象を与え、不思議な威圧感をもたらしている。
それは、青年の正面にある壁も例外ではない。だが彼は決して怯まず、辺りを慎重に見回す。
いくら大国といえど、ここは壁の外側。しかも日の替わりも近い。短く生えた草原と、木がまばらに生えるだけで、人影は一切ない。
彼は人がいない事を確認すると、再び小さく呟く。
「......マスター権限により、任意型トラップ『ランダム・ワープ・ドア』を強制発動。行き先はマスタールームに指定」
ポワーと、またもや淡い光が溢れ出し、辺りを薄く照らす。今度は青年ではなく、彼の目の前の壁をおおっている。
光がやみ、辺りを再度闇が支配する。目の前の壁には、信じられない事に『一つの扉』が現出していた。
横に長く伸びた壁の中、忘れ去られたかのようにポツンと寂しく存在している『それ』は、恐ろしいほどの違和感を生み出していた......。
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