都市伝説

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 青年がぼそぼそと何かを喋ると、扉から金属同士がこすれる耳障りな音が聴こえ、触ってもいないのに扉が開く。  扉をくぐると、小さな部屋に出る。  その部屋には、宙に浮いていて『黒く輝く拳大の大きさの球体』と、その球体の前に背を向けるようにして置かれたやたらと豪華な椅子。そして先ほどの扉とは違う、どこか禍々しさを感じる扉しかなかった。良く言えばシンプル、悪く言えば面白味のない部屋だ。  土の壁のため、『洞窟』と言われれば信じてしまうような部屋にはやたらと不釣り合いなほどに高級そうな椅子に、青年は馴れた様子で座る。 「......ダンジョンウインドウ、『オープン』」  彼以外には誰もいないため、一見すると一人言にもとれる。しかし、その一人言に反応するかのように、彼の目の前に青い半透明な板が現れる。  板には『網』のような絵が描かれていた。  そこには無数の『白い点』があった。ほとんどの『白い点』は動いていないが、一割くらいの点は動いていいる。それだけでも十分に不思議なのだが、さらに不可解な事に網目の穴の部分、つまり壁であるはずの部分を『白い点』は当たり前のように通過し、通路を横切っている。
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