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「やっと……取れた」
視界が歪められる。付けすぎでぼやけていた視界は、レンズを外したことで、今度はぐにゃりとずれる。ああ、それにしてもガチャ目は辛い……。
裸眼酔いを防ごうと、右目を軽くつむってリュックを漁る。教科書、ノート、折り畳み傘、水筒、みかん、空の弁当箱……。
「そんな……」
メガネがなかった。なぜだ……。リュックはあるというのに……。
絶望でますます視界が歪んでくる。
……軽く寝込みたい。
なんとか希望は見えそうだった。
いったいどこまでこの草原は続くのか。
はるか上空の鳥たちはその翼を踊るように羽ばたかせ、一直線に突き進む。
あの鳥たちはいったい何を食べているのだろう。その疑問からわたしは動き出した。けれども、その答えは日がな一日歩いてもいまだに出ない。
鳥がいるということは、どこかに彼らが食べる食物があるはず。木の実、果実、魚……。なんでもよかった。最悪の可能性は考慮から外して、止むことのない鳥の矢印を辿る。
……さすがに、さすがに……虫だけは……。
虫は食べたくは……でも、いざとなったら……いや、やはり食べたくない。
……いざとなったら、そこで考えよう。
こぼすことが決してないように、麦茶を噛むようにして飲む。
「あとこれだけ……」
もう持った時に、重いと感じることのなくなったペットボトル。わたしの寿命のメーターだった。あと百ミリリットル。わたしに残された時間は、これだけ。
人は何も食べなくてもなんとか数日は生きていけるという。断食を宗教でやれるくらいなのだし。
けれど、水分は違う。人の身体のほとんどを構成するという水分は取らなければ、脱水で即、命の危険に陥る。だから、断食をする人たちも水分を取ることは許されているという。
水分を大切にショルダーバッグにしまい、くいくいと目をこする。水平線の先にやっと、見えた。どれくらい先かはわからない。でも、確かにあった。
まだ点ほどにしか見えない。けれども、あった。ぽつりと淡緑の海原に現れた小さな小さな島……。やっと……ようやく陸地が見つかった。
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