34人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしを吊っていた緊張の糸が切れていくのを感じる。赤い夕陽の暖かみを背に感じながら、わたしの身体は、意識と共に、沈み込んで、いく……。
「よかっ……た」
本当にどうしようか。ふて寝はやめた。
朝日が目に染みる。ろくに何も見えていないが。森の遥か上空から、何事もなかったかのようにして太陽は昇ってくる。お日様というものは、往々にして世の中の出来事には無頓着だ。
……目が焼けそうだ。
太陽に背を向けると、春先にしては強い気がする日光が、じりじりと首筋を焼いてくる感じがする。じりじりはするが、まったく焼けてない。不思議だ。
「まあ、道理で夜寒くなかったわけだ」
体感温度は初夏の頃、六月下旬くらいのものに似ている。少し湿っぽいから、暖かめの梅雨時期に近いのかもしれない。妙な画面こそ表示されっぱなしになっているが、スマホで日付は確認できた。
四月二十二日。あの日からすでに二日経つ。
――あいつらはどうしているのだろうか。
今日昨日とこの二日間……森を彷徨っている間、ずっとそれを考えていた。
神隠し。やはり、いくらなんでもタイミングが良すぎ、だ。
あの時……何があった?
始まりはやはり……ソーマのスマホだろう。
神隠しを調べているときに突然表示され、勝手にダウンロードが開始された……『神園』というデータ。今思えば、データであったのかすらも、疑わしい。
何か背筋がぞくりとするものを感じて止めに入ろうとしたが、金縛りにあったかのように動けなかった。
《契約完了》
不気味な声だった。機械音にもかかわらず人に感じられる……。
そうだ。そんなことを考えていたらだった。
最初のコメントを投稿しよう!