第Ⅰ章 絶望と再会と 正篇

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 わたしを吊っていた緊張の糸が切れていくのを感じる。赤い夕陽の暖かみを背に感じながら、わたしの身体は、意識と共に、沈み込んで、いく……。 「よかっ……た」  本当にどうしようか。ふて寝はやめた。  朝日が目に染みる。ろくに何も見えていないが。森の遥か上空から、何事もなかったかのようにして太陽は昇ってくる。お日様というものは、往々にして世の中の出来事には無頓着だ。  ……目が焼けそうだ。  太陽に背を向けると、春先にしては強い気がする日光が、じりじりと首筋を焼いてくる感じがする。じりじりはするが、まったく焼けてない。不思議だ。 「まあ、道理で夜寒くなかったわけだ」  体感温度は初夏の頃、六月下旬くらいのものに似ている。少し湿っぽいから、暖かめの梅雨時期に近いのかもしれない。妙な画面こそ表示されっぱなしになっているが、スマホで日付は確認できた。  四月二十二日。あの日からすでに二日経つ。  ――あいつらはどうしているのだろうか。  今日昨日とこの二日間……森を彷徨っている間、ずっとそれを考えていた。  神隠し。やはり、いくらなんでもタイミングが良すぎ、だ。  あの時……何があった?  始まりはやはり……ソーマのスマホだろう。  神隠しを調べているときに突然表示され、勝手にダウンロードが開始された……『神園』というデータ。今思えば、データであったのかすらも、疑わしい。  何か背筋がぞくりとするものを感じて止めに入ろうとしたが、金縛りにあったかのように動けなかった。 《契約完了》  不気味な声だった。機械音にもかかわらず人に感じられる……。  そうだ。そんなことを考えていたらだった。
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