第Ⅰ章 絶望と再会と 正篇

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 よく、パソコンに何か問題があったときに急に切り替わる、あのホラーチックな意味不明な英語の羅列が現れたかと思うと、今度は青塗の目が痛む刺激の強い画面……。蒸気を吐き出すような音と、高速でCDを読み込むとき特有のあの少し鳥肌を立たせる音。スマホが鼻息荒く暴れ回り――――。  そして新たな画面が現れた。  『create & compile』  イタリック体でそう画面上部にそう書かれていた。そしてその下には四つのボックス型のクリックゾーンが二行二列で配置されている。  しかし、そのうち三つはまだ押せないようだった。色がグレーになっていた。仕方なしに俺は、左上の黒塗りのボックスに白文字の『create』を押した。何が起こるのかさっぱりわからなかったが、非常に興味深かった。こんなアプリは見たことがない。  わずかな恐怖心は巨大な好奇心に押し退けられた。  ……だが。  切り替わった画面に俺はフリーズした。  『imagine』  ただ画面の中央にはそれしか書かれていなかった。菫色をした画面がゆらゆらとしているように錯覚するほど……俺の思考は揺らいだ。 想像しろって……。なんだよ、それ。  苦笑いが込み上げてくる。何をどう想像すればいいんだよ。骨伝音が脳に届く。  『imagine』  点滅する命令に、だったら……と俺は想像した。  視力回復! と。今一番切迫していることを。  ――本当に想像しただけだった。何も起こるわけあるまい、と。  しかし、違った。  『start creating』  『complete creating』  立て続けに現れる『その文字』を俺はまじまじと見た。  ――想像した。  ただそれだけで、何もいじっていないスマホは、活動を再開した。まるで生きているかのように。俺の思考を読んでいるかのように。
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