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皮肉なものだ。
神隠しを調べていた時に、神隠しにあうとは。
俺に起こった現象……。まさに調べていた、あの、神隠しだ。
ある者は山にいた時に、ある者は森にいた時に、ある者は洞窟の中にいた時に、『急にその場から消える』。『神様が連れて行ってしまった』ように消える。それが神隠し。
だが……。それだけじゃ、ない。
「神隠しにあった者は……一体、その後、どこにいるのか」
それが気になって、俺たちは神隠しを調べ始めた。
――結果、これか……。
神隠しを調べていたら、神隠しにあった……。
まるで、犯人を突き止めようとして、動き回っていたら口封じにあう探偵だ。調子に乗って、知ってはならないことを知ろうとした。近づいてはならないものに近づいた。
かのイカロスかもしれない。彼は太陽に近づこうとした結果、地に落とされた。
ミイラ取りでもあるかもしれない。
俺も……俺たちもその一人なのか?
蝋の翼をもがれたということなのだろうか。ミイラになったということなのだろうか。
なぜなのか。わからない。
「なんで……なんでなんだよっ!」
答える声は当然、ない。
何も答えない。
俺を、こんなところに連れてきた、神は。
無性に祈りたくなる。
どうか、帰してくれと。
「ここは……どこだっ!」
何も起こらない。
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