鈴木と中村

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 だから今日、俺が公園のゴミ拾いをしていたのも趣味の一環というわけである。ゴミ一つ無い公園を見回しなんとも言えない充足感に満たされていると、その途中にふと傍のベンチに見知った顔が座っていることに気が付いた。  クラスの話しかけづらい奴ランキング一位を目下独走中の、鈴木恭一郎だ。 「お、鈴木じゃん。奇遇だな、こんな所で会うなんて。何して──って、読書か。お前らしいなぁ。ははっ。つーか本読むなら図書館行った方が良くないか?まあ、いいんだけどさ」  とりあえず無視するのも気まずいので話しかけてみる。他の奴らは話しかけづらいなんて言ってるけど、俺はそうは思わないので。 「お前の方こそこんな所でなにをしているんだ?」  だって話しかければちゃんと答えてくれるし。話しかけづらいってのは答えてくれなさそうって雰囲気がそう思わせるんだろうけど、実際はそうじゃないから問題ない。 「うん?見ての通りゴミ拾いだけど?いや、思ったよりも結構あってさー、予定より全然時間かかってやんの。なはははは」  ここで会ったのも何かの縁。これを切っ掛けに鈴木と仲良くなってみよう。席が隣だから今までも積極的に話しかけてはいたんだけど、相手にはしてくれるものの素っ気なかったし。学校の外でならクラスの連中もいないからもっと親しげにしてくれるかもしれないしな。鈴木っていつも一人で小難しそうな本読んでるけど、俺にはそれがいつもちょっとだけ寂しそうに見えてた。 「暇な奴だな。ゴミなんてお前が拾わなくてもその内に公園の清掃業者が片付けるだろう」 「いやー、でもやっぱりポイ捨てされてると放っとけなくてさ。それに清掃業者の人だって毎日来るわけじゃないじゃん?毎日綺麗にってのはさすがに無理だけど、業者の人だけに任せっきりにするよりは良いと思って」  だから鈴木も本当は友達とかが欲しいんじゃないか、と。まず俺が友達になれば、そこから友達の輪が広がるはずなのだ。 「ご苦労な事だな」 「いやいや、まあそうは言うけどもさ、たまには良いこともあるんだぜ?良いことも。ま、ホントにたまーにだけどナー」  友達になるならお互いの事を話し合う必要がある。そして礼儀として話すのは自分のことから。まずは得意なジャンルの話題で場を盛り上げよう。ちょうどさっき拾った『良いもの』もあることだし。
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