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「ふっざけんなよ!なんだよもう!俺のときめきを返せ!俺がりおんちゃんをどれだけ楽しみにしてたと……──ッ、俺がりおんちゃんをどれだけ楽しみにしてたと!?この高まった興奮を俺はどこへ吐き出せば良いんだ?どこへ吐き出せば良いんだっ!?」
思わずありったけの思いをぶちまけてしまった。肩で息をするほどに。
「すまないが、僕はもう帰る」
急に鈴木がそんなことを言って立ち上がってしまった。いかん。憤りがたぎりすぎてすっかり鈴木を放ったらかしにしてしまった。何をやってるんだ俺。
「そんな!こんなに可哀想な俺を見捨てて帰っちゃうのかよ!?優しい言葉の一つでもかけて慰めてくれたっていいじゃない!見捨てんといて!」
ここは無理にでも食い下がらなければ。鈴木が帰ってしまっては元も子もない。
「見捨てるもなにも、お前が一人で勝手に一喜一憂していただけだろう。僕は帰る」
「う……。じゃ、じゃあ俺も帰るかな……。うん、帰ろう。もう帰ろう。帰るしかない」
鈴木の言っていることはもっともだ。今日はもう諦めて帰るしかないだろう。俺は持っていたごみ袋をごみ箱に放り込んでから帰ることにした。
だが歩き出してみると鈴木も同じ方向に歩いているではないか。
「ついてくるな」
だけどやぱりまだ鈴木の機嫌は悪いらしく、いつにも増して冷たい態度だ。
「べ、別について行ってるわけじゃねえっての。たまたま同じ方向なんだろ?たまたま、偶然、シンクロニシティなんだろ。わかんねーけど、多分。そういうことなんじゃねーの」
俺は電車通学なのでいつも使っている駅を目指して歩いているが、鈴木も同じ方向なんだろうか。そろそろ帰宅ラッシュの時間なのか混雑した街道の人混みの中を鈴木と二人で歩くというのはなんだか不思議な感じだ。いや、俺はホモじゃない。断じて。
「まさかお前、電車通学か」
「うん?そうだよ。電車通学ってさ、帰りはまあいいとしても行きが嫌なんだよ。通勤のラッシュとかと時間かぶっててギュウギュウで……って、まさか鈴木も?」
珍しく鈴木から質問をされたことと、会話の流れで気が付いたのだが、もしかしてこれは駅までチャンスは延長というパターンかもしれない。
「駅は?」
「無視かよ。はあ、まあ駅って、帰りに使ってる駅だよな?だったら市戸瀬だよ、JRの。ちなみにあそこの立ち食い蕎麦屋は美味いぞ。マジでな」
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