鈴木と中村

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「なるほど」 「でさ、そこで俺は言ってやったわけ。『お前は知らないようだから教えてやるけど、マンガン乾電池よりもアルカリ乾電池の方が長持ちするんだぜ』ってな。そしたらアイツ鳩が豆鉄砲食らったような顔しやがってさ、ぷぷっ。いやー、今思い出しても笑えるわ。抱腹絶倒ってのはあのことだな」 「そうだな」 「いやむしろ狐に摘まれたような顔ってのか?なんにしろ間抜けな顔だったなー。つーかマンガンの方が消耗早いのなんて常識じゃん?ジョーシキ。マンガン乾電池信者かよっ!?って話?みたいな?ぶぷぷっ」 「たしかにな」  心なしか、さっきから鈴木の返答がおざなりな気がする。テキトーに相づちを打っているだけというか、流しているというか。とにかく俺の話に興味を示していないことだけはうかがえる。 「……あのさ、鈴木。俺の話聞いてる?ひょっとして聞いてない?なんかさっきから反応が淡白っていうか、相づち打ってるだけっていうか、まさかとは思うんだけど聞き流してたりする?っていうか聞き流してるよな?」 「そうだな」 「そうだなって、相づちとはいえ否定する気無し!?そこまで俺の話に興味無いの!?それってさすがに酷くないかっ。興味無いならせめてそう言って、話題変えるとかするからさぁ!もっとホットな話題を提供するからさあ!」  完全に俺の話を聞き流してる。今の話そんなにつまらなかったか?もっとホットな話題を提供するとは言ったものの、鈴木にどんな話題を提供していいのやら皆目見当が付かなくなってきた。 「たしかにな」 「うん……もう、いいや。なんか、ごめん。ごめんなさい。俺が悪かったです。もうしませんから、許して下さい。せめて少しだけでも俺の話を聞いていただけないでしょーか?お願いします」  最後の手段は懇願より他にない。少なくとも誠意は伝わるはずだ。俺なりの誠意が。これで駄目ならさすがに心が折れそうになる。 「ん?あれは──」  だがまたしても俺の言葉は鈴木に届かない。しかし今度は様子が違う。雑踏の中、なにかを目で追っているような感じだ。鈴木の視線を追ってみると、その先には同じクラスの峰岸由利枝の姿があった。
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