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人混みを縫って路地へ踏み込むと案の定、峰岸は三、四人の男に囲まれて衣服を脱がされかけていた。それを見た瞬間先程とは比べ物にならない激昂が、俺の頭を真っ白にした。
「その手を離せっ!下衆野郎どもっ!」
「な、中村くん……」
「あん?なんだ?お前」
「離せってんだよっ!!」
俺は無我夢中で峰岸の腕を掴んでいる男に殴りかかった。
「ぐほっ!?」
が、急に下腹部に鋭い痛みが走る。視線を落とすと、他の男の腕が俺の腹に突き刺さっていた。
「げはっ……ごふっ!」
込み上げてくる嘔吐感に耐えきれず俺は膝から崩れ落ちると、地面に吐瀉物を撒き散らしていた。
なんだこれ。峰岸が逃げる時間を稼ぐどころか、ただの馬鹿じゃないか。なにやってんだ、俺。
「なんなんだ?こいつ。この女の彼氏かなんかか?」
「いや違うだろ。釣り合わなそーだし」
「酷っ!お前がそれ言う?」
「うわ、お前ウザッ。つーかお前の方が酷いわ」
「ま、いいじゃん。てか、コイツ邪魔しねーようにもうちょいボコッとこーぜ」
「そだな。ヒロ、逃げられねーように女押さえとけよ」
「ガッテン承知」
「あと、抜け駆けすんなよ」
「へへっ。はいよ」
頭の中がグチャグチャになって上手く考えがまとまらない。腹の痛みは止むこと無く襲ってきて、それに拍車をかけている。だがそんなことはお構いなしに男の一人が俺の胸ぐらを掴んで持ち上げるように無理矢理に立たされ、今度は顔面にパンチを食らう。
「がっ!」
それと同時に手を離されたので、俺はもんどりうって地べたに倒れ込んでしまう。さらに追い討ちをかけるように蹴りが腹にぶち込まれる。さっき胃の内容物は全て吐き出してしまったのか、胸糞の悪い嘔吐感はあるのに口からはなにも出てこない。代わりに酸っぱいような、多分胃液の味がしたが、顔を殴られた時に口の中が切れたのか血の味と混ざり合ってよくわからない。
「ふっ……ぐっ……ぉえっ……ぎっ……ぇぐっ」
それからしばらく俺は男たちに囲まれて蹴られ続けた。ほんの数分の出来事なのかもしれないが、俺には耐え難く長い時間に感じられた。
「死なれても困るしな。ま、こんなもんっしょ」
「だな。こんだけボコッとけばもう邪魔してこねーだろ」
「さーて、それじゃ後はお楽しみといきますか!」
「ひっ……!」
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