鈴木と中村

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「そうだなって、相づちとはいえ否定する気無し!?そこまで俺の話に興味無いの!?それってさすがに酷くないかっ。興味無いならせめてそう言って、話題変えるとかするからさぁ!もっとホットな話題を提供するからさあ!」 「たしかにな」 「うん……もう、いいや。なんか、ごめん。ごめんなさい。俺が悪かったです。もうしませんから、許して下さい。せめて少しだけでも俺の話を聞いていただけないでしょーか?お願いします」 「ん?あれは──」  中村の話はともかく、今見知った顔が居たような気がして思わず足を止めた。雑踏の中なので断定はできないが、僕の高校の制服を着ていたのでおそらく間違いはないはずだ。歩みを止めて確認すると、それは同じクラスの女子の峰岸だった。中村には少し悪いことをしたとは思うが、僕の中の優先度では知り合いを目視で確認することの方が高かったので相づちすら打たずに無視をしてしまった。わざとではないが少々申し訳のない気持ちになる。 「あ?あ、あれって同じクラスの……峰岸、か?なんか回りにいる奴らガラ悪いな。峰岸ってああいうのと付き合いのある方じゃないだろ。どっちかっていうとお嬢様タイプっつーか、そっち系じゃなかったか?あんなヤンキーっぽい奴らと接点があるとは思えないし、それになんか様子が変じゃないか?嫌な感じがするな」  中村の言う通り、峰岸は真面目な優等生でおしとやかな女子だ。容姿も端麗で男子の人気も高く、絵に描いたような才色兼備ぶりである。言っては悪いがその峰岸の取り巻きには似つかわしくないような連中が取り囲んでいる。確かに、嫌な感じではある。大方一人でいるところを不良連中に絡まれたといった状況だろう。峰岸は大人しく、抵抗などが出来そうでないので連中にとっては格好の獲物なのかもしれない。案の定、峰岸は人影の無さそうな路地裏の方へと連れて行かれてしまった。  中村は峰岸が絡まれているのを憤りを隠せない様子で見ていたのだが、峰岸が連れて行かれるなり僕の方を振り返ると声を荒げた。 「助けに行こうぜ、鈴木!あの連中は多分ろくでもない奴らだ!正直言って俺は運動神経に自信はねえけど、二人でなら峰岸が逃げる時間くらいなら稼げるかも知れないしさ!とにかくこのまま放っとけないだろ!」 「断る。厄介事に巻き込まれるのは御免だ。そもそも必要がない」
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