掌編

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 タクシーが空中を走っていたのは、昔に乗ったアトラクションのレールに似ていたし、近くに感じた星はネオンだったに違いない。  青木が降りた地点には、むかしよく訪れた居酒屋がネオンを輝かし営業中なのを示している。  哲司の気が触れたのも事実だ。そして一度だけ別人になった哲治に会った。  ただ、さやかが、 「あんな兄ーー」 とつぶやいたのを聞いたかどうかは微妙だ。言いかねない性格と、環境だった気もする。青木はそうして過去を思い浮かべようとしたが、大半が煙のように掴めずにいた。  さやかも、哲司も十年ちかく会っていない。そのため夢の中の二人は十年前と変わらない姿だった。二人のことを思い出したのはどれくらいぶりだろうか。  青木はくたくたになった体で交差点をわたった。Uターンしてきたタクシーが空車の文字を光らせ、そばを通過した。 「空車か、あれが空を翔た原因かな」 と、夢で空中を走った理由を思ったりした。
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