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こんな風に突如として忘れかけた記憶を想起することは、引っ越しとか、部屋の大掃除したとき、懐かしい音楽を聞いたとき、懐かしい香水の薫りに触れたときくらいだろうか。
奥に閉まっておいたため視界に触れることがなかった思い出の物を見つけると、当時の光景がありありと眼底に浮かびはじめる。一つのことから連関していって、つぎつぎとよみがえる。欠落しているものも多いけれども、きっかけさえあれば蘇生する場面が多くある。そう考えると、記憶は薄れるけれども、しっかり自分のうちに残っているものなんだな、と青木はしみじみ思った。
夢を形成するものは現実に体験したものが多いんじゃないか、とも青木は考えた。
「いい思い出を残そう。悔いのない日々を送ろう。これから俺がましな夢を見るために」
誰もいない路上でつぶやきつつ、青木は煙草に火をつけた。
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