掌編

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「ハハ、ハハハ、久しぶり。ハハハ」  上田哲司が笑いながら言った。しかしその瞳は、青木に焦点があわされていなし、おもしろいことがあったわけでもない。 「あ……うん」  さやかの兄・哲司は、数少ない男のいとこで、親しかった。しかし、このとき懐かしさより、不気味さが勝っていた。まるっきり別人のような気もした。  家族間の不和により、哲志の気が触れた、との話は数年前から聞いていた。が、実際にその姿を見たとき、哀しくなった。  哲司が消えた。代わりにさやかが眼前に現れる。 「あんな兄ーー」 と、さやかが口走った。 「しかし」 青木は何かを言おうとしたが、言葉はでなかった。
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