2人が本棚に入れています
本棚に追加
「ハハ、ハハハ、久しぶり。ハハハ」
上田哲司が笑いながら言った。しかしその瞳は、青木に焦点があわされていなし、おもしろいことがあったわけでもない。
「あ……うん」
さやかの兄・哲司は、数少ない男のいとこで、親しかった。しかし、このとき懐かしさより、不気味さが勝っていた。まるっきり別人のような気もした。
家族間の不和により、哲志の気が触れた、との話は数年前から聞いていた。が、実際にその姿を見たとき、哀しくなった。
哲司が消えた。代わりにさやかが眼前に現れる。
「あんな兄ーー」
と、さやかが口走った。
「しかし」
青木は何かを言おうとしたが、言葉はでなかった。
最初のコメントを投稿しよう!