おまけ 記憶の中の宝物 sideミウ

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コウの事を思い出していると智の声が聞こえてきた。 「どうした?何か嬉しそうな顔をして」 私はその声に「ハッ」と我に帰った。 そして顔を上げると智が不思議そうな顔をして私を見ている。 私はそんな智を見ながら気まずくなっていた。 …ヤバッ。 嬉しそうな顔って…。 言えるわけないじゃん!幼い頃にプロポーズされたの思い出してたって。 こんな時に他の男の事を考えていたのかって気を悪くするかもしれない。 折角の誕生日にそんな事で険悪になりたくない。 だから私は否定するように頭を横に振った。 「ううん。何でもない」 「そっか」 そう言うと智はまた黙ってしまった。 私はそんな智にどう声をかけていいのかわからずに、ただぼんやりと顔を見るしかなかった。 すると後ろの席のカップルの声が聞こえてきた。 「私ね、会社を辞める事にしたの」 それは女性の声ではっきりとした口調だが、少し甘えた感じにも聞こえる。 きっとこの話を向かいの男性にしたかったのだろう。 女性が言った「会社を辞める」 よくある会話かもしれないが、私は違和感を感じていた。 だって誰が見てもキャリアウーマンで仕事に自信を持っているように見える人が言う言葉ではない。 きっとただの退職ではない。 …気になる。 でも智の事を蔑ろにするわけにもいかない。 けど…ずっと黙ったままだし、話を聞くだけならいいよね。 だから私は気づかれない様に二人の会話に耳を傾けていた。
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