おまけ 記憶の中の宝物 sideミウ

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私は予想をはるかに超える会話にゴクリと喉を鳴らした。 プロポーズの返事じゃないんだ…。 それにしても女性が言った言葉…すごく興味がある。 独立って言ったよね? 自分で会社を興すって事でしょ?社長になるって事だよね? 確かにあの女性の風貌からしても可笑しくないけど…。 どう見ても私と年齢が変わらないよね? だって私29歳だよ。 独立なんて考えた事ないし私の周りにそんな人いない。 会社で言われた仕事をこなして、決まったお給料を貰う。 毎日の繰り返しだが、それが当然だと思っている。 アラサー女子に限らず男子もそうでしょ? それなのにこの若さで…独立?社長? 私にはありえない!しかも男性を誘っている。 きっとこの男性は仕事上でのパートナー…いやこの甘い感じはプライベートもだ。 となると彼氏を誘っているんでしょ? うわー!凄すぎる!私には皆無の世界だ。 か、カッコイイ。 まるでドラマを見ているみたい。 で、男性は何て答えるの? 私はまた背向かいに座る男性に意識を集中すると、ずっと黙っていた智の声が聞こえてきた。 「肉料理、旨かったな」 「えっ!ああ…うん!美味しかった」 その声にハッとした私は慌てて智を見た。 智は少し落ち着いたのか、逸らさずに私の目をちゃんと見てくれている。 …良かった。いつもの智に戻ってくれた。 そんな智を見ていると、もう背向かいのカップルの会話を聞く気は失せていた。 だって智とデートしているんだもんね。 私はニコリと微笑むと出されたデザートを口に頬張った。
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